人並みの生活

みんながわかっているはずの事実。

  • 人並みの生活、というささやかな希望は社会全体で見ると実現不能
  • 人生仕事だけではないってのは負けに行っている
  • 頑張らないと、暮らせない

なんだか日本全体が豊かになったような気がして人並みの生活を送るくらいなら頑張らなくても可能、という勘違いがまかり通っているのですが、そんなわけない。古来から、頑張らないと人並みの生活など送れないのです。格差社会の元凶は、我々の世代が、個性とか、趣味とか言って騙されて、頑張るのはアホだと思い込まされたことにあります。人間頑張らないと暮らしていけないのですよ、本来。

一部の成功事例に騙され、人生にはゆとりが必要と思わされて、頑張らなかった人が負け。仕事も趣味もっていうのは、実は頑張ってそこそこ勝ち組にならないと実現できません。そんなこととっくに気付いているはずなのにね。

私。45歳。派遣ワーカー。バツイチ。週5日、一日8時間、毎日1時間半残業。こうして働いても、手取りで18万円そこそこ。でも住んでいる所が東京の最西端で、家賃が4万円。毎月の食費と好きな本、自転車にお金を少しばかりかけても、わずかばかりの蓄えも出来ています。
確かにこれからどうなるかわからないし、自分の心身について全く不安もない、とは言い切れません。でも今更頑張ろうとか、頑張れ、頑張れ、とかケツを引っ叩かれることはされたくない。大体、人が生きて行くという上では、頑張れば頑張るほど失うものも多い、と思うのですが。
これは私が新卒で、正社員として働いていたときのこと。仕事を教えてもらっていた一人の先輩がいました。真夜中を過ぎた残業なんてざらだったし、土曜出勤も当たり前。奥さんから子供のことについての電話が会社にかかってきても、「子供のことはお前にまかせてあるだろう」というような人だった。しかもそれらのことが、会社から強制されていたとかそういうことではなくて、会社人間という前に、仕事が好きで好きでしかたがなくて、自分から頑張っていたんですね。
でも結局、その先輩は死んでしまった。同僚と飲んで午前様で帰宅したのだが、翌朝奥さんの寝ている横で冷たくなっていたのです。その時4歳だったか、女の子と生まれたばかりの男の子の赤ん坊が残されました。
頑張らなければ得られない「人並みの生活」って何なんでしょう。人は皆、文字通り「人並み」という安定的に見えて、それでいて非常に曖昧なテリトリーに憧れ、安住したい、と思っているのですね。
じゃ逆に「自分は自分、他人は他人」ということをよく言うけれど、独立独歩で歩いて行く人生というものはこれはこれで難しい。けれどそういう風な生活にも憧れ、ちょっと危険なスリリングな生き方をしたいなぁ、と思うのも人のわがままなところ。
で、今の私はどうなのだ、というと、「人並みの生活」と「自分は自分、他人は他人」的な生活の中間という所。派遣ワーカーで収入が安定しているときは、「これで人並みの生活が送れる」と思い、収入が少なかったりすると、「私は私、他人は他人」と自分を慰める。いやはや、なんとも、曖昧な私です。