昨日の雨で、暑さが和らいだと思ったのだが、今日また暑さがぶり返した。夕立があって湿気を含んだ風が吹いて、まだ夏だなと思わせるけれども、それでも晩飯を食べて、ちょっとセブンイレブンまで行こうと外に出ると、二、三日前までは晩になっても頻りにないていた蝉の声も鳴りをひそめ、代わりに何だかわからないが、秋の虫の音が聞こえてくる。大通りに出る路地沿いに立ち並ぶ古い民家は冷房など入れず、窓を開けっ放しにして涼を取っている。見ると茶の間の仏壇の上に、古い家族の写真が掲げられている。
すると突然一匹の蝉が街灯に突っ込んできて、私の足下に落ちてくる。そして仰向けというのか、腹の方を上にして身体をバタつかせながらもがいている。鳴き声もいつもの威勢のいい声ではなく、ジージという、頼りない今にも消え入りそうだ。しかし見ていると、そのうち体制を立て直してまるでオンボロのプロペラ機が離陸するように、どこかに飛んで行ってしまった。
気がつけば八月も下旬になろうとしてる。

蝉と言えば、こんなことは知らなかった。

明治維新の時、日本にやってきたヨーロッパ人はイタリアや南仏などの地中海沿岸地域出身者を除くとセミを知らないものが多く、「なぜ木が鳴くのか」と尋ねたものもいたという。現在でも、日本のドラマを欧米に出すとき、夏の場面ではセミの声を消して送るという。日本ではいかにも暑い盛りのBGMと感じられるが、あちらでは妙なノイズが乗っていると思われる場合が多いという。 蝉 Wikipedia